憲法
2021.10.25
音読の宿題
小学校低学年では毎日、国語の教科書の音読の宿題がある。娘はつい最近まで「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ作)を音読していた。「ちいちゃんのかげおくり」は、私が小学生の時にも教科書に載っていたお話で、多くの方が読んだものと思う。
ちいちゃんは、お父さんとお母さんとお兄ちゃんの4人家族。体の弱いお父さんが出征する前日、家族で墓参りに行き、お父さんの提案で4人で「かげおくり」をする。空に映った4人の影は今日の記念写真だとお父さんは言う。お父さんが出征した後、戦争が激しくなり、空襲を受けたちいちゃんはお母さんとお兄ちゃんと火の回った町の中を逃げる。その途中でお兄ちゃんがこけて怪我をしてしまう。お母さんはお兄ちゃんをおんぶして、ちいちゃんはお母さんと手をつないで走るうち、多くの人に揉まれて、ちいちゃんはお母さんたちとはぐれてしまった。一人ぼっちになったちいちゃんは、自宅のあった場所に戻って一人防空壕の中で眠る。そして、あるとても晴れた日、ちいちゃんは防空壕から出て・・・。
音読を何度聞いても涙が止まらなくなる。娘には「また泣いてる。」と言われる。このお話は戦争の激しい描写はほとんど無いといってよいが、静かな描写の中でもその場面の様子がよく目に浮かぶ。そして、昔はちいちゃんの気持ちで読んでいたものが、すっかり母の気持ちで聞くようになった。ちいちゃんとはぐれた時、母がどれだけ自分を責め、後悔したか、どれほど防空壕の中で一人で眠るちいちゃんを助け出して抱きしめたかったか。
うちの小さな娘は、戦争は怖い、嫌だ、死にたくない、みんなに死んでほしくないと言う。そのとおりだ。戦争で殺されてよい命なんてない。子供たちのこのシンプルで当たり前の気持ちや命を守るためには、まずは私たち大人がどのような社会にするかにかかっている。娘の音読に毎回大泣きしながら、私は私たち大人の社会に対する責任を再確認したのだった。