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2020.12.07

学術会議問題について

「学術会議問題」について

弁護士 羽 柴   修

菅内閣は今年9月28日、日本学術会議が推薦した105名の新委員のうち99名しか任命せず、6名の任命を拒否しました。「学術会議」については、「日本学術会議法」という法律により会議設立目的や任命方法が決められています。79年前の12月8日、我が国は米英との戦争に突入、海外で2000万、国民の300万が犠牲となった悲惨な戦争を遂行するのに多くの科学者が「その意思に反して」非人道的兵器の開発等、戦争に協力させられてきました。同じようなことを繰り返すことのないよう、「学術会議法」は「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学会と連携して学術の進歩に寄与することを指命とする」、この指命を達成するために「独立して職務を行う」(同法3条)、「国の特別機関」(国家行政組織法8条の3)とすると定めています。

指命達成のため独立して職務を行うことが出来るように歴代内閣は、学術会議側が推薦した全員をそのまま任命(政府が行うのは形式的任命)してきた訳ですが、菅内閣は6名の科学者の任命を拒否し、とんでもないことをした理由については「人事に関することなのでお答えは差し控える」と「壊れたレコードのように」繰り返している訳。とんでもないことが起きているのですが「学術会議問題」は国民にとってそんなに関心がないようで、「問題とは思わない」あるいは「よく分からない」という市民が多いようです。

「人事問題なら理由を説明する必要がない」なんて誰が決めたのでしょうか。理由を説明する必要がないのであれば、思想やものの考え方が政権の意向に沿わないという差別人事が自由にできることになり、思想及び良心の自由(憲法19条)、法の下の平等(同14条)など憲法違反であることは明らかです。しかも、その人事を取り仕切っている人物の経歴が「警備公安当局のトップ」であれば尚更です。1933年、京都大学の滝川教授(刑法学者)の学説がマルクス主義的であるとして辞職させられるという事件が起き、この事件をきっかけにして学問の自由や思想・良心の自由が侵害され、自由にものを言えない時代になって泥沼の戦争、広島と長崎が「ヒロシマとナガサキ」になった、この歴史を決して忘れてはいけないと思います。

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