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2020.09.22

米国の対中関税WTO違反判定から考える

弁護士 本 上 博 丈
 2020年9月16日の夕刊に「米の対中関税 WTO「違反」」という見出しの記事があった。米国が2018~19年にかけて中国製品約24兆円分を対象に課した最大25%の制裁関税について,米国は知的財産への脅威に対抗する正当な行為だったと主張していたが,世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会は,証拠不十分なため米国の主張を認めることはできず,WTO加盟国間の関税などで差別的に扱うことを禁じた「最恵国待遇」の原則に反すると判断したという。つまり,米国が世界貿易ルールに違反し,中国がそれによる被害を受けたというのだ。
 僕はこの記事を読んで意外だと思った。それは,米国は自由貿易の盟主,中国は関税や輸出入検査を外交上恣意的に運用するという思い込みがあったからだ。WTO紛争処理小委員会の判断は,それが正反対になる場合があることを示している。
 この記事からは,トランプ政権という特殊な事情があるにせよ,世界の経済状況は大きく変わってきていること,そして思い込みは誤った判断につながることを強く感じた。日本政府もこれまでと同じように米国追随を続けていけば,波風が立たず一安心というのではなく,誤った判断に陥るリスクが大きくなっていることぐらいは十分認識しておくべきだと思う。(2020.9.22記)

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