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2021.12.18

日本人は他人に冷たい?

 「やさしくない国ニッポンの政治経済学 日本人は困っている人を助けないのか」(講談社選書メチエ)の著者である田中世紀さん(オランダ・フローニンゲン大学助教授)のインタビュー記事を興味深く読んだ(2021/11/27朝日新聞夕刊)。日本人は他人に冷たいという傾向が様々な調査で出ているとのこと。

 英国の慈善機関が2009年からほぼ毎年行ってきた「人助け」に関する調査で,「過去1か月に,①見知らぬ人を助けたか,②慈善活動に寄付をしたか,③ボランティア活動をしたか」を質問。2021年6月発表の調査結果では,日本は114か国中,①人助けが114位,②寄付が107位,③ボランティアが91位,総合結果も114位で最下位。2009~2018年の10年間でみても,日本は126か国中107位で,先進国で最下位。この慈善機関は「日本は歴史的にも,先進国の中で市民社会が非常に脆弱な国だ」と指摘している,とのこと。

 米国の調査会社による2007年の調査では「政府は貧しい人々の面倒を見るべきだ」という項目に「同意する」と答えた人は日本は59%で,47か国中最下位だった。英国91%,中国90%,韓国87%,とのこと。

 2020年の内閣府の調査でも,地域住民の間で「困ったときに助け合うのが望ましい」と考える人の割合は約36%。もっともこの内閣府の調査で,6割以上の日本人が「社会のために役に立ちたいと思っている」と回答している,とのこと。

 田中さんの話では,この他人に冷たいのは,「他人に迷惑をかけてはいけない」という考えと裏腹の関係にあり,人間関係が薄れることで自分と他者,自分と社会とをつなぐものが無くなっていくと,どういう人を助けるべきかという「公助」に対する共通理解もなくなるのではと危惧している,とのこと。もっとも,他人と社会参加する場がもっと生まれれば,社会的に役立ちたい,という気持ちを生かす場も増えるのではないか,ともおっしゃっている。

 田舎と町中など場所によっても違うように思うので単純化はできないとは思うが,上記の諸調査結果には結構驚きつつも,やっぱりそうなのかなと納得する感覚もあった。社会がぎすぎすしたように感じるのも,多くの日本人にとって,一部の親しい人間以外の他人の遮断(とにかく関わりを持たない)という人間関係が普通のようになってきているからかもしれない。もしそうなら,日本が真っ当な民主主義社会として維持,発展していくことも難しくなっていくのかもしれない。(弁護士本上博丈。2021年12月18日記)

 

 

 

 

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