中神戸法律事務所 Nakakobe Law Office

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憲法

2020.12.18

コロナと憲法

今年一年、コロナによって私たちの生活は様々な不自由を強いられてきました。そこでコロナと憲法との関係について、きちんと整理しておきたいと思います。憲法の目的の一つに私たちの社会全般を私的な領域と公的な領域に分け、私的な領域には国家権力を介入させないということがあります。例えば結婚は私的な領域の典型で、いつ、誰と、どんな形で結婚するのかは自由です。法律で何歳までに結婚しなければならないと定めればただちに憲法違反になります。これに対して公道での自動車の運転は公的な領域です。運転するのは免許が必要で、最高速度も細かく決められ、シートベルトの着用も義務付けられます。自動車の運転は他の多くの人の命に関わることだからです。大雑把に言えば、他の多くの人の生命や健康に関ることは公的な領域とされ、細かい規制ができ、個人が自由にふるまっても特段その他大勢には影響が及ばないことが私的な領域で、細かく規制することは憲法違反、というわけです。ではコロナ禍ではどうか。これまで飲み会をしたり、カラオケをしたり、旅行をしたりすることはその他大勢には無関係な私的な行事でした。が、コロナ禍ではこうした行動をみんながどんどんやってしまうとコロナが蔓延して多くの人の生命や健康を危険にさらすことになります。だから、これまで私的な領域であるはずだったこうした行動が、公的な領域へと変化してしまったというわけです。人権の先進国ヨーロッパでも、私的な領域であるはずの買い物や犬の散歩にまでも規制し、罰金を取るということまでしています。買い物や散歩も公的領域となったからです。ひるがえって日本ではどうかというと、私的な領域と公的な領域の区別はそのままにして、「要請」と「自粛」といったグレーであいまいなやり方でこれまでやってきました。日本らしいと言えばそうなのですが、ここに来てその限界があらわになってきました。コロナに対する個々人の考え方がバラバラになってきたのです。これは置かれている立場によって何が重要かは違うのだからやむを得ないことです。どうしたって居酒屋の大将と子育て中のママさん、ホームで暮らすシニアの方と大学生では考えることはまるで違うのです。私は、そろそろ日本もヨーロッパ型の規制を考えるべきではないかと思っています。期間を限定し、公的領域の拡大をはかって、法律でもって行動を制限することを始めるべきではないかと思うのです。もちろんしっかり補償をしたうえで、です。では、いったいどこで線を引くのか。それは、国民できちんと議論し、コンセンサスを得ることを目指すべきでしょう。それをきちんと行いさえすれば、規制や罰金を取っても、憲法違反の問題は起きないと思います。むしろそれこそが憲法が求める民主主義のあるべき姿だと思うのです。2020年12月18日八木和也

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