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一般民事・家事

2020.09.03

【事例紹介】相続事件

背景・概要

被相続人Aには,離婚した先妻との子Xがいた。後妻との子Y1をもうけたが,後妻はその出産後間もなく病死した。その後,Aは自分の両親の世話と子Y1の養育を両立できるよう,自分の実妹Bの協力を得ることとして,自宅土地建物をA名義で購入のうえ,両親,実妹B及び子Y1と5人暮らしを始めた。両親をA,B,Y1の3人で看取り,その後事故で右半身麻痺となり,さらに肺がんで寝たきりになったAをBとY1で看取った。なおAの名字を名乗る子がいなかったことから,その名字を継ぐ趣旨で,Aの肺がん判明後間もなく,AはY1の子Y2と養子縁組した。

Aの遺産は,自宅土地建物(本件不動産)のほか,わずかな預貯金だった。Aの遺言書はなく,相続人はX,Y1,Y2の3人で,法定相続分は各3分の1だった。

Xより神戸家庭裁判所に遺産分割調停申立があり,Y1,Y2より依頼を受けた。本件不動産には,現在,Y1夫婦とBの3人が居住。Y1,Y2としては,本件不動産を二人で確保して守りたかったが,単純計算によるXの法定相続分に相当する代償金を一度に支払える資金はなかった。代償金をできるだけ少なくすることが目標だった。

結果

本上は,①本件不動産の減価要因としてBの使用借権を,②少なくとも3年に及ぶY1のAに対する介護の寄与分を,③代償金支払方法として分割払いを,それぞれ主張した。

調停不成立で審判に移行し,神戸家裁は,本件不動産はY1,2が取得するとしたうえで,①Bの使用借権を認めて本件不動産鑑定価格から10%(約500万円)減価し,②Y1がした介護のうち1年分として219万円の寄与分を認め,③Y2がXに払うべき代償金のうち一部について月額5万円ずつの14回分割払いを認める審判を出した。

総括

① 相続人ではない同居親族の使用借権を理由に遺産不動産の減価を認めた審判例は珍しいと思われる。

② 介護について寄与分が認められた点は良かったが,親族介護を理由に減額した寄与額には疑問がある。

③ Y2の年収証明を提出して分割払いの確実性を証明したうえでのことだったが,代償金の14回分割払いを認めた審判例は珍しいと思われる。

弁護士:本上 博丈

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