一般民事・家事
2021.09.28
ワクチン職域接種と労災扱い?
職域接種でコロナワクチンをうって、発熱で休んだ場合は、労災になるのでしょうか?
コロナワクチンの副作用は、発熱(高熱)、だるさ、体の節々の痛みなど、多岐にわたるようです。
職場でワクチン接種を勧めている以上、労災になるような気もしますが・・・
そこで、厚生労働省のwebを探すと、
ワクチン接種については、通常、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められず、これを受けることによって健康被害が生じたとしても、労災保険給付の対象とはなりません
というQ&Aがありました。いちいちクリックしなくて良いように引用しました。
無慈悲です。
発熱者はかなり多いようなので、いちいち労災として扱ってられないという政策的判断もあるような気がします。考えすぎでしょうか?
一方で、医療従事者と高齢者施設従事者の場合は、別の扱いがあります。
これも厚労省のQ&Aです。
とのことでした。
労災については以上の扱いです。
ところで、薬の副作用一般については、補償制度が設けられています。
健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます。
これが、予防接種健康被害救済制度というものです。
これができるまでには、長い前史があります。
予防接種では僅かな確率で、死亡または重篤な神経系の副作用が生ずる可能性があります。
以前は、学校などで予防接種を義務づけられていたのに、予防接種によって一定割合で発生する重篤な副作用を救済する法律はありませんでした。被害者が放置されてきたのです。
これにたいして、東京を中心に、予防接種被害訴訟(国家賠償請求)が提起されて長年の裁判闘争があったのです。
日本国憲法29条は財産権の保障を定めています。
その3項に、私有財産は正当な補償の下にこれを公共のために用いることができる、と定めています。よって、土地を強制収用した場合にはその補償が行われることになっています。
このように私有財産でさえも公共目的で損害を被った方に対しては憲法によって補償されるのであるから、より重要な法益である生命身体の被害が予防接種という公共行為によって生じる場合にも憲法上の補償の趣旨が及ばないのは不当である、という考え方が背景にあります。
裁判などもあり、予防接種については、義務ではなく、努力義務になり、また、健康被害救済制度も充実されていったのです。