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2022.06.14

原発汚染水の海洋放出

原発汚染水の海洋放出について

 

福島原発では放射性物質を含む汚染水が毎日発生している。アルプス(ALPS)という放射性物質を除去する設備で処理しているが、取り除けないのがトリチウム。この汚染水がこの11年間たまりにたまって125万トンを超えている。タンクでの貯蔵が限界にきて国は海洋放出を決めた。漁獲量もふえ、これからという時に風評被害が再燃する可能性もあり、地元漁協は海中のパイプ設置工事は認められないとしている。当然だ。風評被害だけではない深刻な問題がある。

 

国の放射性物質の放出基準は1㍑あたり6万ベクレル。国の説明では、海水で希釈(うすめられる)ので、このレベルの水を70歳になるまで毎日約2㍑飲み続けても被爆は年間1㎜シーベルト以下におさまる。これは1年間に自然界から受ける放射線による被曝量と同等あるいはそれ以下だから、国際的にも許容されるレベルだから大丈夫という。大丈夫なのか。

 

皆さんは熊本有明海(加害企業新日本窒素)と新潟阿賀野川流域(昭和電工)で起きた公害・水俣病をご存知だろうと思う。工場から排出された有機水銀は、海水で希釈されて海水の中の水銀の濃度はたかだか1μg(マイクログラム)/ℓ。これは1g(グラム)の100万分の1が1㍑に溶けているレベルで、普通では水銀による中毒、神経障害は起こらない。しかし、有明海の魚の中には大体10ppm(10㎎/㎏)程度の水銀がたまっていた。水にとけた微量の水銀を魚がとりいれることにより、約1万倍、場合により10万倍の濃縮が起きていたのである。貝殻は殆ど炭酸カルシウムだが、貝は海中にたかだか1ppmしか溶けていない炭酸カルシウム・イオンを海中からせっせと集めて7~80%炭酸カルシウムである貝殻をつくる。このことは水俣病の有機水銀中毒の発病原理を解明した宇井 純(東大工学部助手、沖縄大学名誉教授)先生の「公害原論」に記されている。

国にはこうしたことをしっかりとに説明する義務がある。

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