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2025.03.21

石破総理のお土産問題について

 石破総理が懇親会の後に新人議員へ10万円の商品券を配った問題が国会で議論になっている。
 争点は、石破総理による商品券交付が政治資金規正法上は認められていない個人による政治活動への寄付行為にあたるかなわけだが、この問題へはあえて立ち入らない。仮に抵触するとしても、責任論へ発展するほどの重大な違法性があるとは、私は思わないからである。
 ただ、私はこのニュースを聞いたときに自民党の体質をよく表している点で重要なニュースだとは思った。
 以前にも書いたが、私は青年法律家協会という若手弁護士の団体で長い間役職をやらせてもらっていて、今でも若手弁護士や修習生、学生などと食事に行く機会が多い。1年目の弁護士がそこにいることももちろんある。
 そこで仮に私が、1年目の弁護士に10万円とまで言わなくとも、それなりの額の商品券をお土産として渡したら、その弁護士はどう思うだろうかと考えてみた。
 おそらくもらった時は嬉しいと思う人もいるかもしれないが、後でどんな仕事を頼まれるのかと怖くなり、私に対して警戒心を抱く人も多いだろう。
 問題はここからで、最初はそのような抵抗感を多くの人が抱けたとしても、それが回数を重ねてくればどうだろうか。
 それが私のやり方なのだと受け入れる気持ちが芽生え、やがて商品券を期待して食事に来るようになるかもしれない。
 そして、そうやってお金で人心を掌握していく術を自らも覚えていくかもしれない。
 つまり、石破総理のお土産問題とは、お金の力にものを言わせて数を握ることが政治であるとの時代錯誤の文化を新人議員へ引き継いでいくきっかけを与えるものなのである。ここに重大な問題があると私は思う。
 人は、お金のためだけに動くわけではない。その仕事に価値があると思えて、かつ尊敬しあえる人間関係がベースにあれば、お金など介さなくとも引き受けてくれる人も多い。そういうことを続けていれば仲間も増えてくる。それが人というものなはずである。
 自民党は未だに企業・団体献金がなければ政治活動ができないなどと言い張っているが、お金で人を動かし、権力を維持しつづけることが政治だと誤解している人達なのである。その根っこには、こういう低俗な人間観が横たわっているのだ。八木和也

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