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2025.06.08

 SNS選挙について思うこと(2)

 前回は若者たちの政治参加を促進するという観点からSNS選挙を肯定的に書いてみたが、世界を見渡したとき、果たして肯定して良いのかというのは正直悩ましい。

 ご存じのとおり、世界は、張ったりと脅しとフェイクでのし上がったヤンキーによって振り回され、大変な思いをしている。

 やることなす事すべて思いつきの出鱈目であるが、それは何十億人もの人々の生活に重大な影響を及ぼすような内容であるため、無視を決め込むこともできず、各国が対応に大わらわとなっている。
 
 あれほど無茶苦茶な人物が、超大国のリーダーとして選出され、しかも共和党議員たちは誰も文句を言えないという現実を見せられると、アメリカの民主主義はすでに壊れてしまったのかと暗澹たる気持ちになる。

 そしてアメリカの民主主義を壊した犯人は誰かと問うならば、それはSNS選挙であり、より端的にはアルゴリズムだということになると思う。

 アルゴリズムとは、手順や計算方法と訳されているらしいが、要するにスマートフォンの利用者一人一人の特性をAIが閲覧履歴や行動履歴などから掴み取り、その利用者が興味をいだく情報を取捨選択し、次から次へと送り込むシステムのことである。

 AIは独自の目的を持っている。それは利用者をスマートフォンに釘付けにし、絶え間なく動画や写真、短文などの情報を見させ続けることである。こうすればGoogleやフェイスブック、Xに広告主からたくさんお金が入るためだ(テレビの視聴率と同じ原理)。

 選挙に関する情報も、このアルゴリズムによって極度に単純化されてしまう。AIが、どの情報が刺激的で、分かりやすく、また利用者の興奮を誘い、選挙にのめり込ませるかを判断し、送り込んでいく。

 そこではまともに国の将来のことを考え、集められた資源を何に振り分けるのかと言ったことを冷静に考えると視点はなく、選挙というお祭りに参加し、どう盛り上がるかという視点が中心となる。

 そうなってくると、候補者の資質も、良識や知識、経験などはむしろ邪魔で、フェイクでもなんでも、人々を湧き立てる何かを発信できる人物が有利となる。まじめに次の世代のために何をすべきかと訴えるような候補者は、アルゴリズムによって弾かれてしまう。

 トランプ政権の誕生は、このアルゴリズムの特性を理解しつくした本人及びその参謀たちの勝利であったと私は思っている。
 
 SNS選挙がこれから進展していけば、やがて我が国でも同じ現象が起き、とんでもない政治家が次々と誕生してしまうかもしれない。すでにその萌芽が兵庫県では始まっている。 

 SNS選挙を野放しにしておくこともできないこともたしかである。八木和也

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