憲法
2025.05.12
よそはよそ、うちはうち。
今国会で、選択的夫婦別姓制度の導入は見送られる可能性が高そうです。かれこれ30年以上前から議論され、また国連からも導入勧告を何度も受けていますが、全く議論が進みません。現在の法律では、結婚するときに夫婦は同姓を義務付けられています。しかし、同性にしたくない人もいます。結婚によって姓を変える手続が余りにも煩雑で面倒だとか、姓は個人のアイデンティティーに関わることだから、などの理由です。
選択的夫婦別姓制度に反対する意見としては、「夫婦同姓は日本に定着した制度だから」とか、「夫婦の一体感が無くなる」とか、「親と違う姓だと子供がかわいそう」だから、旧姓の通称使用を拡大すれば良いという意見もあります。
しかし、夫婦同姓は明治時代になってからの制度で、江戸時代には庶民は名字はありませんでした。歴史的にいうと夫婦別姓は古来からあり、有名なところでは「北条政子」ですね。彼女は源の姓は名乗っていません。「夫婦の一体感」なるものも、離婚率が3割を超える現状では意味はありません。子供の姓については、別姓にした家族が姓を選択すれば良いことで、そのときの戸籍制度は個人別にすればよく、デジタル社会では技術的に可能です。
いずれにしても選択的夫婦別姓制度は、あくまでも「選択的」ですから、それぞれの夫婦が同性にしようが別姓にしようが任意に選べば良いことです。
昔、「友達みんな」が漫画を持っているから、自分にも買ってくれとお願いしたとき、母は「よそはよそ、うちはうち」と言っていたことを思い出しました。
(弁護士 西田雅年)