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アベノミクスは「的外れ」だった

弁護士 西 田 雅 年

アベノミクスは第2ステージに入ったらしい。では、「第1ステージ」(いわゆる「3本の矢」)の結果はどうなったのでしょう。政府自身は、成功とも失敗とも総括をしていません。そのため「第2ステージ」は、失敗を隠すための目くらましと批判されています。

実際には円安や株高が進み、企業業績は回復し、政府の思惑通りになりました。他方、物価にも景気にも影響はほとんどありません。

元々アベノミクスは、低迷していた日本経済を立て直すための政策でしたが、低迷の原因は何でしょうか。国内需要が減少したことと、労働者の年間賃金が上がらないことが指摘されています。労働者の賃金が下がると購買意欲が下がり、国内需要が伸びません。需要が伸びないと賃金が上がらないことになり、その繰り返しで日本経済は低迷していたのです。ですから、根本的に改善しようと思えば、賃金を上げるのが一番です。何でもかんでも「バブル崩壊」のせいにしてはいけません。

日本経済は、労働者派遣などに見られるように賃金が上がらない構造になってしまいました。その分、企業の内部留保は空前の額(300兆円以上)になっています。大企業から低所得層に対する、いわゆるトリクルダウン(滴り落ち)は起きませんでした。アベノミクスは失敗しています。
 経済の低迷を脱するには、内部留保を活用して正規社員の雇用や賃上げをしたり、逆進性の強い消費税の撤廃や税率の引き下げという、思い切った政策が必要です。そうしなれば国内需要は伸びていくはずがありません。

2016年

ブラックバイトから身を守ろう!

弁護士 萩田満

一昔前は学生バイトといえば、大学生などが講義の合間の時間を使って気楽に働くというイメージだった。しかし、最近は、講義や試験に支障が出るような働かせ方をするバイト先が急増している。「ブラックバイト」と呼ばれて問題になっている。

まずは実際に見聞きした話を取り上げよう。

1 働いた時間に応じたバイト代を払ってくれない

一番よく相談を受けるパターンで昔からよく聞く。飲食店で働いていると、「仕込み、片付けは就業時間外にやるものだ」とか「バイトには残業代はない」などという。不払い残業代を請求できる上に、労基署の指導の対象となる。

2 休ませてくれない

この話を最初に聞いたときの驚きは、いかばかりか。「都合のいいときに来て働く」というバイトのイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。24時間コンビニやチェーン店などでよく聞く。

正社員より責任がないから、シフトを組むときに考慮するのが学生バイト契約の性質上当然であり、また、バイトでも有給休暇を取得できるので、絶対に休むことは可能。

3 売れ残りを自己負担することを命じられる

おでん、クリスマスケーキ、恵方巻きの買取りはよく聞く話。そもそも昔は恵方巻きなど聞いたことなかった(少なくとも東日本では)が、次々とキャンペーン商品が登場したために生じるようになった。

売れ残るのはお店の戦略ミスであり、バイトに負担させることはできない。また、バイトにミスがあって損害が生じたとしても、全額負担させることはできないのが裁判所の考え方なので、買取や賠償の強制は論外。

4 辞めさせてくれない

1〜3のブラックバイトを経験してきた学生が最後にたどり着く言葉「もう辞めたい」さえも認めてくれない。ブラックな墓場。次のバイトを募集するための広告料を支払えと言われた、という相談もある。

退職の自由はある。有期雇用契約でなければ、退職申入れから2週間で実際に辞めることができる。

最近、こういう「ブラック●●」がはやっているが、ブラックバイトは今の日本社会を映す鏡である。

雇用破壊が進む中で親世代の賃金が下がり、他方で授業料がうなぎのぼりでは、バイトをしなければ生活できない学生(親世代も)が増えている。

店長以外はバイトのみという職場も増えている。正社員中心の雇用システムは崩壊し、バイトが基幹労働者としての役割を要求されるという理不尽ゆえに休むこともやめることも許されなくなる。

そして、学生バイトは労働法の知識が十分ではなく、また、コンビニなどのこぢんまりした職場では、労働組合が入り込む余地も少ない。労働組合の組織率・影響力はますます低下している。

ブラックバイトを撲滅するような展望は見えてこないが、希望もないわけではない。18歳選挙権が実現したことで、学校現場で法教育をしやすくなったという。以前は、学生向けに労働法の知識を教えることは学校側に嫌がられることが多かったが、学生向けの法教育として労働法上の権利義務をわかりやすく説明するのは大事ではないか。

2016年

悪夢のリニア中央新幹線に反対する

弁護士本上博丈

1.国土交通大臣は2014年10月17日JR東海に対しリニア中央新幹線工事実施計画を認可、JR東海は2015年12月18日山梨県南巨摩郡早川町内で南アルプスを貫くトンネルの着工に向けた起工式を行った。リニア全ルートを通じて初の土木工事となる。

リニア中央新幹線とは、東京品川から南アルプス、中央アルプスを横断して名古屋、そして大阪に至るルートを、超伝導磁石で地上10cmに浮上させて、時速505km、品川名古屋間286kmを40分、品川大阪間438kmを67分で結ぶというもので、東京名古屋間は2027年、東京大阪間は2045年開業予定。ルートの86%はトンネルで、都市部は地下40m以下の大深度地下に。工事費はJR東海全額負担の単独事業で、工事費は名古屋まで5兆4300億円余、大阪まで9兆0300億円余と巨額で、運行の消費電力は現在の新幹線の3.5倍。

2.確かに夢の乗り物かもしれない。しかし原子力発電がそうであったように、夢へのあこがれだけで実現に移していってよいということにはならない。
 僕は山登りが趣味でアルプスの山々に畏敬の念を抱いているので、まずアルプスの土手っ腹に巨大なトンネルを掘ることが許せないと思った。特に山が深く高く大きい南アルプスに全長約25km、深さ1100mものトンネルを掘るのは、自然の冒涜も甚だしい。ルート図を見ると、百名山の塩見岳(3047m)のほぼ真下を通るようだ。その土手っ腹にリニアのトンネルが開いていることを想像すると、百名山も興ざめだ。

環境破壊の指摘はアルプスの自然破壊のほかにも、次のとおり。

  1. 東京ドーム51杯分にも及ぶという莫大な量の残土の捨て場による自然破壊。
  2. 工事期間10年に及んでダンプなど工事車両が1日1000台前後走行するという交通公害。

  3. 明らかにエコに反する莫大な消費電力による発電負荷への悪影響。

  4. アルプスに限らずルートのほとんどトンネルや地下なので地下水脈への予測不可能な悪影響。

安全性についても、深刻な問題がある。


  1. 南アルプス一帯では中央構造線と糸魚川―静岡構造線という大断層帯を横断するため東海沖地震など地震のリスクが高いが、十分な被害予測がされておらず、地震の場合の安全対策が確立されていない。

  2. トンネル内で事故が起こった場合、距離が長く深さもあるのに、乗客の安全な避難経路が十分に確保されていない。

  3. 沿線住民にはリニアの磁力線による健康被害のおそれもある。

3.大前研一氏の指摘などでは、経済的な見地等からも次のような疑問がある。


  1. 東海道新幹線は時速320km走行可能な設計がされており、現に東北新幹線は時速320kmで走っている。東海道もカーブなど線路の是正や騒音対策を適切に行えば、それが実行可能になる。他方、リニアは地下40mにホームを造れば、品川と名古屋でそれぞれ乗り換えに10〜20分はかかるから、その乗り換え時間を加味すれば、実際の所要時間は今の新幹線とほとんど変わらなくなる。今の新幹線や飛行機と比べて時間的優位性がないという点は、大阪まででも同じ。

  2. リニア建設に対しては、JR東海に対して、既に土地取得の際の不動産取得税と登録免許税の免除という税優遇が決まっている。さらに上記の難工事や環境問題対策費、地震や事故への対策費、そして将来的な長期金利の上昇リスクが深刻なものとなって建設のための巨額借入金とその金利負担にJR東海が耐えられなくなれば、国費投入しかなくなる。

  3. 何とか完成開通できたとしても、86%が地下の道程は、その間駅がほとんどない地下鉄に乗っているのに等しく、旅情も何もない。夢のリニアに一度は乗ってみたいと思っても、旅としてリピーターを獲得できる魅力はない。将来的に人口が減少し、旅客リピーター獲得の見込みもなければ、総工費5兆円でも回収の目途は立たず、結局、国費投入になる可能性が高い。上記②のように建設費が予想を超えてさらに巨額化していれば、なおさらだ。

4.さらに驚くべきことに、2015年12月1日付け朝日新聞朝刊によれば、米国東部のリニア計画にJR東海がリニア新幹線の輸出を目指しており、その建設に向けた調査費約42億円のうち、米連邦政府が補助金約34億円を出すことを決めたが、負担者未定だった残り約8億円を日本政府が負担する方針を固めたという。他国の公共事業に日本政府が直接お金を出すのは異例だが、安倍政権が成長戦略の一つに掲げるインフラ輸出につながると判断したとのこと。

何のことはない。JR東海にとって、日本のリニア新幹線はリニアを米国その他海外に売り込むための実験場兼実用化された見本であり、安倍政権は一企業にすぎないJR東海の販売促進費を血税で賄おうとしているのだ。

2016年

〜子供が病気!その時,働く親は・・・。〜

弁護士 野上真由美

今、私は子供から風邪をもらい、ゴホゴホしながら原稿を書いている。新年早々、病気の話で申し訳ないが、共働きをしている家庭では、子供が病気になると一大事なので少し書いてみたい。保育園問題といえば、まず待機児童が挙げられるが、預けたら預けたで子供は親の都合とは関係なく病気になる。病気であれば子供は保育園をお休みするが、仕事をしている親は子供がどんなに心配であっても簡単に「はい、お休み〜。」とはいかない。

保育園を休む事態になった時、私の頭はフル回転。仕事を休めるか、休んだ場合、遅れをどこでカバーするか、母に子供を任せられるか(家まで2時間の道程。)、母がダメだったらどうする!?、夫は休めるか(ほぼ、「ごめん、無理」の一言で終わる。共働きなのにこれもいかがなものか。)などなど。一応の対策が決まるまで心臓バックバクである。

では、病児保育はどうだろう。私が住む某市にも市が委託する病児保育の制度はあるが定員は6名(8月に1か所閉園になり定員が減った)。そして、今の時期のように様々な病気が流行する時期はたいていいっぱいで、キャンセル待ちの〇番目、最終的に当日の朝に預けられるかわかりますという不確定要素満載、それで結局預けられなかったらどうするねん!?という使い勝手の悪い状態である。病気になった場合の行政によるフォロー体制も重要だ。病児保育の定員を減らしている場合ではない。親の自助努力だけではどうにもならないことがあるのだ。というわけで、年始に限らず子供も家族も健康で!と心の底から毎日願う次第である。皆様も今年一年健康に気を付けてお過ごしください。本年もよろしくお願い申し上げます。

2016年

憲法

弁護士 八木和也

昨年は安保関連法案の関係で、憲法がとても注目を浴びた年となりました。私の仕事も憲法の比重がとても増えました。憲法は全然お金になりませんが、やっていると楽しい気分になります。憲法は自分を解放してくれるからです。だから昨年はとても楽しく、充実した一年でした。憲法と安倍総理のおかげです。これは半分皮肉ですが、半分は本気です。安倍政権が暴走したからこそ、みんなが憲法を認識できたのです。そして多くの人が憲法を実践できたのです。

私は昨年、憲法をテーマとした集会や講演、演劇などにたくさん参加しました。どれもこれも思い出深い体験となりました。なかでもデモはとても楽しかったです。「デモが楽しいだって?」と感じる方もおられると思います。私もつい数年前まではそうでした。やらなければならないもの、として参加していました。でも、デモはすごく楽しいし健康にもいいものだと気づきました。超おすすめなのです。プラカードを片手に皆でコールしながら歩くだけなのですが、とても元気が出るのです。安保法案が審議されているころは、毎日にように報道に対して「なんで?どうして?なんでやねん!」とつっこみを入れる日々でした。これまで禁じ手とされていたことがやすやすと乗り越えられていきました。どんどんマイナスの感情のマグマが溜まっていきました。でも、それをデモに行ってきちんと言葉にする。叫ぶ。みんなと一緒にコールする。そうすると胸のつっかえがすーっと抜けていきました。そして身体が軽くなり、疲れも一気に吹き飛びました。また頑張ろうっていう気持ちになりました。自分が抱いている思いを吐き出すということは、人にとってとても重要なことみたいです。とくにSEALDsのデモは秀逸でした。ラップ調の楽しいリズムで「戦争反対! 安保廃案!」「民主主義ってなんだ?これだ!」ってやってると、本気で自分たちがこの国の主人公だという気持ちになってきます。そして不思議なことに、もっと良い社会をつくっていけるんだという思いも(まあ、根拠はないのですが)芽生えてくるのです。だからすごく前向きになれて元気になれるのです。SEALDsデモが未体験の方がおられたら騙されたと思ってぜひ参加してみてください。

たしかに昨年は個々の政治テーマをみると、暗澹たる気持ちにさせられることばかりでした。安保法のみならず、沖縄、原発、TPPなどなど。でも、要するに一番のベースにあるのは民主主義が機能するかどうかなんだろうと私は思っています。きちんと民主主義が機能すれば、こうした問題も一挙に解決していくはずだと思う訳です。なんてったって日本は一人一票を持っている訳ですから。そして、まちがいなく2015年は民主主義が一段階も二段階もレベルアップした年でした。私自身、表現の自由って気持ちいいと体感できた年でした。だから私は楽観的にみております。前に進んでいるんだと思ってます。みなさん。政治に対して主人公として参加していくってことはとーっても簡単です。しかも気持ちがよくて、かつ健康にもよいことでした。ぜひとも、お試しあれ。私は今年も憲法がんばります。

2016

日本の石 ―イサム・ノグチ庭園美術館―

弁護士 野田底吾
数年前、小豆島のYMCAキャンプに参加した時、対岸の屋島に隣接し海坊主の様な形をした奇妙な山が目についた。山は五剣山と言い、最近、その麓にイサム・ノグチ庭園美術館があるのを知ったので、興味深々、高速バスで高松を経由し所在地の牟礼へ向かった。 イサム・ノグチと言えば、広島平和公園にある平和大橋や、札幌のモエレ沼公園をデザインした事で有名だが、殆どの人はそれ以外、余り彼の業績を知らない。

彼は、1904年日本人の父と米国人の母との間に生まれた婚外子の米国籍日系二世で、ユネスコ本部庭園(スイス)やビリーローズ彫刻庭園(エルサレム)、IBM本社庭園(ニューヨーク)など世界各地に多数の作品を残した世界的に有名な彫刻家である(「地球を刻む男」)。少年期を日本で過ごした彼は、中年を過ぎた頃から、しばしば来日し、神社仏閣の庭園を訪れて日本文化を吸収し、作品に反映させてきた。特に世界中の作品現場に日本の石を運び込んでその環境に溶け込ませ、日本文化を表現してきた。

欧米では単なる石材にしか過ぎない石も、日本では竜安寺の枯山水石庭に見る如く、石その物に命があり、置かれた環境によって命は生き返る、と考えられてきた。日系二世として米国人でも日本人でもない扱いをずっと受けてきたイサムが、精神的拠り所を探し求め、四季を彩る日本の石に、父の国に対する特別な思いを抱いたのは想像に難くない。
 庭園美術館がある牟礼は、庵治石の産出と加工で有名な、石を刻む音が絶えない所である。還暦を過ぎた頃に初めて牟礼を訪れたイサムは、地元の石工の助けを借り、そこに制作現場(アトリエ)を置いた。そして日本の精神を彩るに相応しい石、蝉の声が染み入る様な石、を求めて五剣山や岡山市万成、徳島などを歩いた。そして相応しい石を発見するや運び出しては(石釣り)、石のどこを触れば最も良く生命力が蘇るかを考えて、鑿(のみ)を振い、作品として仕上げて行った。

イサムがサークル状に石堤を組上げた内側にある庭園美術館の制作現場には、1988年、彼がニューヨークの自宅に一時帰宅した際、野外に残して行った仕掛り中の石や、ほぼ完成した作品が、屋島の山塊と裏手の五剣山に調和する様に整然と並べられている。そしてどの石も、イサムの手で見事に息を吹き返している。また宇和島の酒蔵を移築した園内の展示蔵には、有名な作品「エナジー・ヴォイド(無的エネルギー?)」やイサムの道具類が作業中のままの状態で保管されている。しかし同年末、彼は帰宅中のニューヨークで84歳の人生を終えてしまい、牟礼には戻っていない。 《見学は要予約》

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2016年

ごあいさつ

昨年当事務所は、創立50周年を迎えました。11月14日に記念と御礼をかねて小宴を催しましたところ、50年の長きにわたりご厚誼を頂きました多くの皆様に御参集頂き、お祝いの言葉やさらなる発展をと激励の言葉をいただきました。新年冒頭、所員一同謹んで御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

昨年は、所謂尼崎事件の裁判員裁判を所長弁護士である私と西田弁護士が担当、5月13日から7月31日まで毎週水曜から金曜まで審理に立会、この間、殆ど通常業務に従事することができず、依頼者の皆様に少なからずご迷惑をおかけしたと思います。今年はそれを挽回するため倍旧の努力を致します。

又、憲法9条をないがしろにしようとする安倍暴走内閣により、立憲主義を無視する安保関連法案(集団的自衛権の行使を容認して、何時でもどこでも戦争することが可能になる法案)が通常国会に上程され、民主主義を無視して衆参両院で強行採決されました。国民の八割が「審議が尽くされたとは思わない」状況の中での暴挙でした。自衛隊員が「戦死する日」が近い将来、現実のものとなる可能性があり、これを何としても許してはなりません。そのためには「9.19を忘れず」、本年6月の参議院選挙で安保関連法案に賛成した自公の参院議員を落選させ、衆参のねじれ国会を実現、安保関連法と秘密保護法を廃止する道筋をつける必要があります。

昨の新年「巻頭言」で、高見淳の長編小説「いやな感じ」、日中戦争から全面戦争に突入していった時代を再び呼び起こしてはならないと訴えました。憲法9条で不戦の誓いを宣言した我が国、私たちにとって、今年は「正念場」の年になりそうです。

弁護士 羽柴 修

2016年