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女性が真に輝くために

弁護士 野上真由美 

2014年新語・流行語大賞の候補に「輝く女性」が挙がった。

安倍政権は、平成25年4月、「女性の活躍」を成長戦略の中核と位置付け、そのための手法として「待機児童解消加速化プラン」、「3 年育休」の推進等を挙げた。2013 年の参院選の公約では、「女性が輝く日本へ」として、「2020 年までに指導的地位の女性割合 30%以上」の目標を掲げた。そして、自らも指導的地位として5名の女性大臣を選んだ。しかし、そのうち2名が平成26年10月にあっさり辞任し、安倍政権の政策に、自ら失敗!?という何ともきまずい雰囲気が漂った。

大臣のことは少し横に置いておくとして、上記の安倍政権の政策について約2年が経過した今、女性として考えるところを書いてみたい。

女性が輝くことには賛成だが、当時安倍さんの話を聞いて、ズレてるなと感じたのは私だけではないはずだ。安倍さんは、育児休業3年で抱っこし放題!どドヤ顔で言い放ったが、3年も休んで本当に職場復帰できるのか多いに疑問であるし(少なくとも私は能力的にも自信がない)、育児休業中はほとんどの人が収入減少するため、生活によっぽど余裕がないと3年も休むのは難しいと思う。ところが、給与はほとんど増えず労働環境は悪くなるばかり。待機児童問題も全く解消されていない。認可型保育所への入所は激戦である。待機自体をあきらめる人も多くいるのではないだろうか。これで女性が活躍なんて鼻で笑ってしまう。

建前だけで女性の活躍が進まないのは、根本的に家事や育児は女性がするものだという考え方が抜けないからだと思う。おそらく、あからさまには言わなくても、3年の育休も母親が取得することを想定しているのだろう。本当は女性には家庭にいてほしい、育児も家庭で担うのが当然だ、しかし、日本の経済力の回復のためには女性の力が必要な点も否定できないから、うまいこと利用したい。本音は政策や言葉の端々に透けてみえる。しかし、良いとこどりだけしようなんて甘すぎるし女性だって騙されない。反対に女性の立場から、専業主婦願望の人が増えることも理解できる。私たちは、あなたたちの都合の良いように働き、産んで、育てて、また働いて、酷使されるために生きたくありませんからね。

同じ新語・流行語大賞の候補に「マタハラ(妊娠・出産を理由に受ける職場での嫌がらせ」、「セクハラやじ」がある。「輝く女性」と言う一方で、女性性を理由に嫌がらせをする現実がそこにある。この新語・流行語大賞は、現在の日本社会の現状や根本的な考え方をよく表している。本音と建前。建前が建前でなくなる日がくるのだろうか。きっとただ待っていてもこないから、今年も、私は私の立場でできることを少しずつでもやろうと思う。

2015年

「アホ言うもんがアホ」

弁護士 西田雅年

最近書店に行くと、嫌韓嫌中のヘイト本が何種類も平積みされているのを見かけますし、電車の中吊りでも嫌韓嫌中の週刊誌等広告をよく見ます。そのため、いつも書店に行くと「玄関が汚れている」というように嫌な気分になりますし、電車の中で強制的に見せられて気分が落ち込みます。みなさんも同じ思いをしたことがあると思います。

ヘイト本は、韓国や中国など他国や民族集団、あるいは在日外国人などの少数者へのバッシングを目的としています。購入層は、男女を問わず高齢者が多いとのこと。まあ、およそ若者が雑誌以外の書籍を買うことはあまりなさそうなので、お金を持っている層と重なるのでしょうね。

ヘイト本の氾濫は、出版不況のため、この種の本が一定数売れるので、一つの産業に化したという意見があります。しかし、世間に溢れかえるほどのネタがそれほどあるのかと感心しますが。

ヘイト本の読者は、「日本の過去の戦争は正しかった」、「日本バンザイ」、「中国や韓国は大したことない」、「中国や韓国に負けるはずがない」、という内容を読んで何かしら溜飲を下げるのでしょうね。

日本人はいつから、こんなに他国の悪口を言って喜ぶような恥ずかしい国民になってしまったのでしょう。昔、おばあちゃんから、「アホ言うもんがアホや」ということを教えてくれなかったのでしょうか。

中国や韓国を見下し、在日外国人など少数者へのバッシングをすることによって、いたずらにナショナリズムを煽り、また外交関係を危うくし、その結果、日本経済へ悪影響を及ぼし、さらには集団的自衛権行使と突き進むことになります。

私たちは、他人の悪口を言うと、それが何らかの形で自分に跳ね返ってくることを自戒しなければなりません。

2015年

アスベスト被害者の救済を

弁護士萩田満

アスベスト(石綿)は断熱性・不燃性などの特徴を持つ鉱物で、産業革命以降、近代産業の屋台骨として世界各国で紡織、建材、水道管、ブレーキライニングなどの用途に大量使用されてきました。ところが、アスベスト繊維を吸入すると、数十年の潜伏期間を経て石綿肺、肺がん、中皮腫などの病気を惹起するという大変危険な物質でもあったのです。

日本でもアスベストの危険性が早くから指摘されていましたが、政府は利潤追求のために大量に使用し、政府も経済発展を優先させてアスベスト規制に乗り出すのが遅れ、その結果、全国で大量のアスベスト被害者が生み出されています。2005年、クボタの尼崎市・旧神崎工場周辺の住民に大量の中皮腫被害が出ていることが明らかになり、このクボタショックを契機としていわゆる石綿救済法が作られましたが、被害者救済として不十分な仕組みのままとなっています。

こうした中、アスベスト被害者救済のため、中小零細のアスベスト工場が密集していた大阪・泉南地域の労働者らの国家賠償請求訴訟(泉南アスベスト訴訟)、旧神崎工場周辺住民の損害賠償請求訴訟(兵庫尼崎アスベスト訴訟)、首都圏・関西・九州の建設労働者による損害賠償請求訴訟(建設アスベスト訴訟)の集団訴訟をはじめとする各種の訴訟が全国で提起されました。アスベストが広範囲に使用されたため、労災認定訴訟なども含めるとその訴訟数・種類は極めて多岐にわたります。

そして、先駆的に集団訴訟に取り組んだ泉南アスベスト訴訟は、2014年10月9日、ついに最高裁判所に国の責任を認めさせ、「国が厳格に規制をすれば産業発展が阻害される」などとうてい日本国憲法下では認められないようなロジックで原告を敗訴させた大阪高裁判決(1陣)を覆すという画期的処理を勝ち取り、これは久々の大勝利と言えるのではないでしょうか。

兵庫県では、私たちが、クボタや国の責任を追及する周辺住民の訴訟、石綿製造工場以外の工場労働者の訴訟、労災認定訴訟など様々な取り組みを行っています。今回の最高裁判決を梃子に訴訟で勝利するだけでなく、全被害者の救済を勝ち取れるよう奮起したい。とりわけ兵庫県は、国内でも最大規模の石綿工場クボタ、石綿原材料を大量に輸入していた神戸港、20年前の阪神大震災後に石綿建材からの粉じんの大量飛散など、全国的にもっとも被害の集中している地域です。今後も継続的な取り組みを強めていきたい。

2015年

ごあいさつ

弁護士 八木和也

私は一昨年11月より憲法をテーマとした演劇をつづけております。昨年も計5回にわたり、姫路、京都、宝塚、西宮、尼崎で公演をいたしました。のべ1200人以上の方に観ていただくことができました。劇団のメンバー11人はすべて弁護士です。シナリオもすべて弁護士が作っています。仕事が終わった夜8時から会議室などを利用して練習してきました。

物語は全3部で構成されており、現在演じているのは第2部「せんそうがおきるまで」です。第1部は「憲法ができるまで」でした。ある国の世襲の王様が挑戦的な歌をうたっただけで市民を死刑にしてしまったため、市民らが立ち上がって王様を辞めさせて憲法を作ります。しかしその憲法は「公共の秩序に反しない限り」自由を認めるといった内容の欠陥憲法でした。次に王様になったキングカズヤーギは自分に反対する表現活動は「公共の秩序に反する」との理由で次から次へと禁止していきます。そこで市民は初めて立憲主義(権力を憲法で縛ること)の大切さを知り、本当の意味の憲法をつくるという物語です。最後の場面でキングカズヤーギは王様の地位を追われるのですが、権力奪還の夢をカズヤーギの孫に託します。

第2部は、憲法を作ってから70年が経った同じ国でのお話です。そこでは市民の自由が保障され、戦争もない平和な国になっていました。しかし市民は平和な生活に慣れてしまい、憲法について考えることはなくなっていました。そこに登場したキングカズヤーギJrは権力の奪還を狙ってある仕掛けを考え付きます。憲法を変えるのではなく、憲法の価値を骨抜きにする法案をいくつかセットで通してしまおうと考えたのです。その法案とは一つは政府の情報を秘密にできる法律、もう一つは他国を守るために別の国に戦争をおこすことができる法律、もう一つは犯罪をすることを話し合っただけで処罰できる法律でした。

もちろんカズヤーギJrはその意図を伏せ、市民らには秘密は超限定だから大丈夫、自衛権の行使も超限定だから心配ないと説明します。市民らも今は憲法があるからきっと大丈夫。悪い政府ができたら次の選挙で落とせば良いと思って安心してしまっていました。市民がカズヤーギJrの企みに気が付いたとき、すでに手遅れでした。すべての法案が通過したあとカズヤーギJrの側近がアナウンスを始めます。「この国はある国に対して戦争を始めました」「ただし戦争を始めた理由は言えません」「いつ終わるのか、それも言えません」「侵略戦争であるか否か、それも言えません」・・・。

今年はいよいよ、集団的自衛権を容認する法案の議論が国会で始まります。そして、秘密保護法の運用も本格的に始まり、適性評価制度に基づく一般市民も巻き込んだ大掛かりな個人情報の収集がなされることでしょう。犯罪について話し合っただけで処罰される共謀罪法案や通信傍受法の改正なども審議されかもしれません。いよいよ待ったなし、100%正念場です。

私は今年も、演劇や街頭演説、市民向け勉強会、大学での講義を通じ、憲法の価値を一人でも多くの人に学んでもらう活動を続けていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

京都太秦から考える

弁護士 野田底吾

数年前、京都太秦の広隆寺を訪れ、有名な弥勒菩薩像を拝観した。この女性の仏像は、写真(1)にある如く台座に足を組んで腰をかけ、両眼を伏せ中指で右頬を僅かに触れる姿勢(思索状態)を取っている。そこから「半跏思惟像」と呼ばれているが、私は大学2年の時に初めて拝観して以来、台座に腰かけ思索にふける姿勢に少し疑問を感じてきた。なぜなら、その作風や素材(朝鮮赤松)から、この仏像は7世紀頃、朝鮮半島からの渡来人・秦一族によって持たらされたと言われながら、朝鮮の風習とは異なる姿勢を取っていたからである。と言うのは、朝鮮ではオンドル床暖房の関係で、人々は昔から直接床に腰を下ろし、男は「胡坐(あぐら)」、女は片足の膝を立てて床に座る「立て膝胡座」の姿勢で生活しており、女性が足組して台座に腰をかけるなどの姿勢は極めて下品で、現に法隆寺半跏思惟像の如意輪観音像は立て膝胡座をしている(写真(2))。尤も、我々の目からは広隆寺の像の方が遥に均整がとれてしなやかに見えるのだが・・。1984年9月、韓国の全斗煥大統領が訪日し中曽根首相と会談した際、大統領夫人は朝鮮の民族服チマチョゴリを着て東京の文化施設を訪問した。着物姿で正座し出迎えた大勢の日本女性の前で、夫人は膝を立てて胡座し、筆で書を著した。翌日の韓国の新聞は、この夫人の姿を写真で報道したが、日本の新聞は立て膝姿で書を著す大統領夫人のイメージダウンを恐れ、写真を一切掲載しなかった。これと同様、像の作者も、これから海を渡って異国の日本に向かう弥勒菩薩のイメージダウンを嫌い、敢えて台座に腰かけさせ、優雅さを表したかったのではなかろうか(日本で制作?)。

写真(1)
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写真(2)
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ところで朝鮮女性が着用する民族服チマ・チョゴリだが(写真(3))、チョゴリとは胸から上半身を包む襟合わせの男女兼用白色衣服、チマは、女性の胸下の半身を色彩豊かな絹布で包むふっくらしたスカート(立膝を覆い隠す)を言う。これに対し男性はパジと呼ばれるズボン様の袴を着ける。朝鮮では、チョゴリやチマ、パジも白で統一する高齢者が多く、自らを「白衣民族」と呼ぶ様に、国のカラーは伝統的に白が基調である(最近、韓国サッカーチームの赤色ユニフォームから国色を赤と誤解する人が多い)。

写真(3)
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日本が1910年に併合した戦前の朝鮮では、大日本帝国による朝鮮民族の皇民化政策が強行された。「創氏改名」政策もその一環だが、それ以上に日本の官憲は、民衆が着こなす白衣を、民族意識の高揚をもたらすとして、警察は白のチマチョゴリを着用して街を歩く女性を見かけると、その場で女性の背中に墨汁を掛けて汚したと言う(ヘイトスピーチを連想)。

≪帰路、太秦からのバスの車中で、私は眠気に誘われウツラウツラしてしまった。どれ位たったのか、お化粧の臭いに目が覚めると、向かい席にチマチョゴリで着飾った若い女性二人が、朝鮮語を交えながら座っていた。桃色、水色などを配したチョゴリをまとった女性は、バスの背窓を通して、春霞にぼんやり揺れ動く京の山々に溶け込み、実に生き生きしていた。きっと朝鮮では、枯れた冬を過ぎ、春を待ちこがれた民衆の着こなすチョゴリは、桃の花や平和で長閑(のどか)な日差しの中で、きっと新緑の春に似合っていた事だろう。それにしても、戦前、朝鮮で日本の官憲により真っ白な民族服の背中いっぱいに墨汁で×印を書かれ、くやし涙にくれていた朝鮮婦人の姿を忘れることができない。チョゴリが本当に美しく花咲く日を願っている≫(1979.4.20の随想集から再録)

2015年

2015年巻頭

弁護士 羽柴 修

「黒い灰が空に舞っている。紙を焼いているにちがいない。・・・東京から帰ってきた永井[龍男]君の話では、東京でも各所で盛んに紙を焼いていて、空が黒い灰だらけだという。鉄道でも書類を焼いている。戦闘隊組織に関する書類らしいという」。1945年8月16日、当時、鎌倉に住んでいた作家の高見順が日記です(昭和16年から26年までの「高見順日記・全8巻」から)。

高見順は長編小説「いやな感じ」の中で、1930年代の治安維持法や軍機保護法、保護観察法などの弾圧立法、血盟団事件や2.26事件などの世相を描きながら、日本が盧溝橋事件(日中戦争)から全面戦争に突入していく時代、どうにも思うように生きられなかった「いやな時代」のことを私たちに伝えています。

安倍内閣は、2013年12月6日「特定秘密保護法」を強行採決(201412月1日施行)、昨年7月1日には、戦後のどの歴代内閣もしなかった「集団的自衛権行使は憲法9条に違反しないとの閣議決定」をし、戦争をする国造り(準備)をしています。戦争をするとき、国は必ず重要な情報を隠します。そして都合が悪くなると責任逃れのため「証拠(情報)を隠滅する」のです。

高見順は、戦後昭和33年に警職法改正案(「おいこら」警察の復活)が問題になっていた時、小説家仲間に「静かなデモ」を呼びかけ、「旗を立てて、ジグザグでかけずりまわるデモでなく、ひっそりと、首だけはちゃんとあげて、落とし穴を掘るやつを見返してやりたいな。10人でも20人でもいいじゃないか。銀座を歩くんだよ。そりゃ、いやですよ。銀座をデモで歩くなんて。しかし、それをやらなければ、もっといやなことが起こりますよ」と訴えています。

2015年