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童謡『里の秋』

 戦争が終って間もない昭和24年4月、私は布靴を履き、布製ランドセルを背負って近所の小学校に入学した。当時は、長い戦禍のもと物資が極端に不足し、男性教師も校舎も少なかった為、女性教師のもとで、午前中が低学年、午後が高学年という二部授業が行われた。そして毎日、夕方になるとNHKラジオから

(1) 静かな静かな里の秋/お背戸に木の実の落ちる夜は/ああ母さんとただ二人/栗の実煮てます囲炉裏ばた♪♪
(2) 明るい明るい星の空/鳴き鳴き夜鴨の渡る夜は/ああ父さんのあの笑顔/栗の実食べては思い出す♪♪ 
(3) さよならさよなら椰子の島/お舟に揺られて帰られる/ああ父さんよご無事でと/今夜も母さんと祈ります♪♪

と川田正子が歌う童謡「里の秋」が流れ、「尋ね人の時間」が始まった。「シベリア抑留中に○○収容所で一緒だった△△と名乗った方をご存じの方・・」等と、戦争で行方不明になった家族や仲間を探すアナウンスが30分も続いた。童謡の歌詞は、母子二人が父の無事な帰国を祈る寂しい内容だが、何となく戦争の臭いを感じさせたので調べたところ、これは太平洋戦争が始まった昭和16年に作詞作曲されたもので、南方に送られた兵隊さんの無事を祈ったものであった。 尤も、当時の歌詞は

3きれいなきれいな椰子の島/しっかり護って下さいと/ああ父さんのご武運を/今夜もひとりで祈ります♪♪ 
4大きく大きくなったなら/兵隊さんだようれしいな/ねえ母さんよ僕だって/必ずお国を護ります♪♪

となっておりA、軍国主義の高揚を意図したものだった。その為、戦後この3と4番が削除され、現行(3)となったものである。

終戦と共に国外から多くの戦争で傷ついた同胞が、ボロボロになって舞鶴、稚内、長崎などの港に続々と帰還した。その時、岸壁に流された慰めの歌もまた「里の秋」であった。きっとこの歌は、引揚者やこれを待ちわびる家族の心に沁み渡ったに違いない。尚、舞鶴港には満州やロシアで厳しい捕虜生活を送った67万人もの引揚者が残して行った資料が、今も「引揚げ記念館」に展示されている。私は、数年前に見学した際、その展示物を眺めている中に自然と目頭を熱くしてしまったが、この展示館は、二度と戦争への道を辿ってはならない事を痛感させる貴重な施設となっている。

ところで、終戦直後の昭和20年代は、帰還者の群れと物資不足による買出人等で、鉄道は大混乱を呈していた。私の体験でも、名古屋駅から父の田舎に行く際に、到着する列車すべてが超満員で、乗客が入口に殺到する大混乱であったが、子供の私も荷物と一緒に窓から放り込まれて乗車した為、父と分れ分れになってしまい大泣きした事がある。しかも超満員の客車を牽引するSLは、戦禍で傷つき或は戦後に粗造された物ばかり、機関士も殆どが未熟者で粗悪の石炭を使用していた事もあり、各地でボイラーが爆発したりB、蒸気不足によってトンネル内でエンストして煙で機関士や乗客が窒息死するC等の大事故が続発した。

そんな混乱期にあって、「里の秋」は荒れ果てた私達の心に僅かな静けさをもたらしてくれた懐かしい童謡である。
A 4は、同一作詞者にしては(1)から(3)と比べ言葉使いなどに違和感がある。多分、戦時下の文部官僚が自ら作詞し付加したものだろう。
B 山陽本線万富駅、吉永駅、東海道本線醒ケ井駅付近などで走行中のSLが大爆発。
C肥薩線第二山神トンネルでは死者49人負傷者60人を出した。

2014年

特定秘密保護(隠蔽・いんぺい)法案と国家安全保障基本法

〜来年は大変な年になりそうです〜

弁護士 羽柴 修

1 自民党安倍内閣がしてきたこと、しようとしていること

(1)安倍晋三首相が就任してからしてきたことは、特定秘密保護法案(この原稿書いている時点では参院特別委員会強行採決前夜)、日本版NSC設置法案(成立)、国家安全保障基本法案の所謂三点セットを国会上程。安保法制懇(首相の私的諮問機関)による憲法解釈見直しと集団的自衛権行使について検討開始、内閣法制局長官の首のすげ替え、新しい防衛計画大綱で敵基地攻撃能力保有することも検討(北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃)、自衛隊の海兵隊化、専守防衛政策・武器輸出三原則・PKO参加5原則見直しなどなどですが、これは日本を戦争する国に造り替えようとするものばかりです。中でも、私たち市民生活に即効で大きな影響を与えると思われる法律は特定秘密保護法と国家安全保障基本法案です。

(2)二つの法案、特に特定秘密保護法案については新聞やテレビで戦時中の治安維持法のような私たちの基本的人権を脅かす危険な法律であることが明らかになってきました。国が指定する特定秘密が何なのか、それ自体が秘密ですという法律で、そういう秘密・情報を漏らしたり、それに接触する(教えて欲しいと頼んだり)ことが犯罪になり逮捕され、処罰(最高刑は懲役10年)されるのです。最近の自民党石破幹事長が、秘密保護法案に反対する「絶叫調デモ」はテロ行為(「政治上その他 の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要」すること)であると発言したことにより、問題が一層明確になりました。

2 今年、何がおきるのか(初夢は悪夢になりそう)

(1)国家安全保障基本法(これが大本の法律)第4条(国民の責務)には、「国民は、国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与し、もって平和で安定した国際社会の実現に努めるものとする」と書かれていて、国民に対し国が決める安全保障施策は国民生活の中で最優先事項として尊重・協力しなければならないとしています。そして「安全保障の目的、基本方針」(第2条)で、「国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう法律上・制度上必要な措置を講ずる」とされていて、それが「特定秘密保護法」なのです。

(2)特定秘密保護法が成立するとどうなるか?戦前の話ですが、「宮沢・レーン事件」の顛末が大変、参考になります。宮沢弘幸さんは北海道帝国大学の学生でしたが、語学の教師であった英語教師のハロルド・レーンさんを敬愛していました。宮沢さんは大の旅行好きで休暇に樺太や満州を旅行、そこで見たもの(後で分かったことですが、根室の海軍飛行場のこと)をレーン夫妻に話したのです。1941年12月8日、宮沢さんは真珠湾攻撃当日に突然、学内で逮捕されました。当時の悪法、軍機保護法違反らしいけれど宮沢さんは勿論、誰も宮沢さんがどうして逮捕されたか分からない。裁判が始まりましたが、何が秘密とされているのかが秘密なのです。容疑内容が秘密とされ、懲役12年~15年の有罪判決が言い渡されました。宮沢さんは拷問と過酷な刑務所生活の中、体調が悪化、釈放後27歳の若さで亡くなりました。世間では恐怖心と自主規制が拡がるばかり。憲法がある今の社会で起きるはずがないと思ったら大間違い。今、我が国はそういう時代に逆戻りしつつあるのです。さてどうしますか?

2014年

ブラック企業の悪質さとそのホワイト化を企む安倍政権

弁護士 本上博丈

1.「ブラック企業」が2013年流行語大賞の候補語の一つになっている。それだけ日本社会にブラック企業がはびこっている現実があり、社会問題にもなったということだ。同年11月にブラック企業被害対策弁護団が全国規模で正式発足し、私を含めて当事務所の何人かは名前を連ねている。何をもってブラック企業と言うかについてはやや問題があるが、同弁護団は、狭義には「新興産業において、若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業」、広義には「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」をいうと定義している。

2.2012年から毎年8月に、日本において、従業員に対して過労やサービス残業を強いたり、パワハラや偽装請負や派遣差別を行ったりなどが問題視されている企業の頂点を決める「ブラック企業大賞」という企画もある。2013年は、2008年6月に26歳の女性正社員が、月141時間の残業を強いられ、わずか入社2か月で過労自殺、2012年2月の労災認定後も責任を認めることなく、創業者である渡邉美樹元会長は遺族からの求めに応じず、いまだに面談も謝罪も拒否していることを理由に、ワタミフードサービス株式会社がブラック企業大賞に輝いている。

私が原告ら代理人を務め2013年3月の神戸地裁勝利判決が大きく報道された販売員過労死事件(大阪高裁係属中に裁判外和解)の東急ハンズも、この地裁判決によって2013年ブラック企業大賞の候補8社の一つにノミネートされた。2004年当時、同社心斎橋店では不合理でおよそ守れない残業予算の遵守が執拗に指導されていたために賃金不払い残業が構造的に行われていたが、同社はこれをあえて黙認していた中で、バレンタイン商戦などの繁忙期に2か月連続少なくとも約90時間の時間外労働を強いられたうえに、上司から不当な理由で怒鳴られるなどパワーハラスメントを日常的に受けていた30歳の男性正社員が29歳の妻と生後5か月半の長男を遺して過労死した。

3.安倍政権は「世界で一番企業が活動しやすい国」にするとして、労働基準法等労働規制法の大改悪を進めようとしている。労働時間を初めとする規制のない「無限定正社員」、労働時間等規制はあるが解雇されやすく待遇が低い「限定正社員」、企業だけの都合で使い捨て自由、正社員には永久になれない超低条件の「非正規労働者」の3種に区分する、そのために労働基準法を変えるほか、2008年末の年越し派遣村以降若干前進した有期契約に関する労働契約法や労働者派遣法による規制をかつて以上に緩和することが狙われている。ブラック企業をその実態が変わらないまま安倍政権が合法化してホワイト企業にしてしまうという恐ろしい企みだ。しかも、労働規制が緩みきった中での競争において企業として生き残っていくために、まともな企業も次々とブラック化していくことになる。

4.ブラック企業の死語化は、実態が変わらないままその合法化によるホワイト企業化ではなく、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)が当たり前の社会にすることによって実現しなければならない。天と地の違いである。今年はその分かれ目になる可能性が高い。ブラック企業問題は、人ごとではない。

2014年

弁護士会

弁護士 萩田満

いうまでもありませんが、弁護士は基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命としています(弁護士法1条1項)。こうした弁護士の使命にかんがみ、国内の弁護士は全員がいずれかの弁護士会に加入し(強制加入)、弁護士会は、高度な自治組織をもって各種の人権擁護活動等に取り組んでいます。しかし最近も、弁護士会は不人気で、役員のなり手も少なくなりつつあります。弁護士会の仕事をしていると日々の業務が疎かになるということで、若手弁護士の中には、弁護士会を敬遠する向きもあります。

さて、そんな弁護士会ですが、今年度わたしは副会長に就任しましたので、仕事をしながらいくつか気づいたことを報告します。

弁護士会は、数十に及ぶ委員会を設置していろいろな活動をしています。人権侵害事件を調査して、関係機関等に警告書を出したりする人権擁護委員会を筆頭に、子どもの権利や両性の平等を推進するための委員会も置かれています。また、裁判制度等の改善に努力するための司法制度調査会、各種公的業務を推薦する推薦委員会なども置かれています。弁護士会長が、業務すべてを統括するのはもちろんですが、4名の副会長体制をしき、こうした委員会業務を4名の副会長で分担しつつ日々、会長を補佐しています。

昨年の弁護士会を象徴する活動は、まず、「秘密保護法」廃案を目指すための運動の取り組みです。法案の問題については、別項で羽柴弁護士が報告していますので、内容は割愛しますが、弁護士会は、「秘密保護法」案は、国民の知る権利を侵害し、戦前の暗黒社会に回帰する恐ろしい法案であると位置づけ、全国の弁護士会及び日本弁護士連合会(日弁連)が総力を挙げて、反対を運動を取り組んできました。弁護士会の中に閉じこもるのではなく、街頭に打って出て、チラシを配り、デモ行進を行い、各団体とも、一致点で共闘する取り組みを旺盛に行ってきました。近年最大の盛り上がりを見せ、国民世論をがらっと変えることができたのではないかと自負しています。こうした国民的な盛り上がりこそ、今後の、悪法の運用への歯止めになるのではないかと期待しています。

他方、弁護士会の活動の中には、残念ながら、皆さんにお詫びしなければならないこともあります。近年、弁護士業務の遅滞や放置、はてには依頼者からの預り金の着服や破廉恥事件など、社会的に許されない事件が続発しています。兵庫県下でも、数件に及ぶ不祥事が発覚しました(事件進行中のため詳細は割愛します)。他方、弁護士でもないのに、弁護士業務を行う「非弁」行為等も散見されます。弁護士会は、こうした弁護士にまつわる不祥事や犯罪行為を撲滅するため、日夜、奮闘しています。そのため、副会長になって睡眠不足が続いています。

2014年

平等とは・・・非嫡出子の相続に関する最高裁決定

弁護士 野上真由美

平成25年9月4日、非嫡出子の相続分に関する最高裁決定が出ました。結論を簡単に言うと、非嫡出子の相続分を定めた民法900条4項但書「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、」との規定は、法の下の平等を規定する憲法14条1項に反しているというものです。

民法900条4項但書の規定をそのまま適用すれば、Aが亡くなり1200万円の遺産がある場合、Aの妻は600万円、嫡出子(法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子)は400万円、非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)は200万円を相続することになります。この民法900条4項但書の規定は、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものではないとし、憲法14条1項に反しないとの判断が続いてきました。しかし、今回の最高裁は、婚姻や家族の形態が著しく多様化し、国民の意識が多様化したこと、欧米諸国でも同様に差別が撤廃されたこと、日本が批准した条約に基づき本件規定の見直しが何度も検討されてきたこと、日本でも戸籍等の記載方法に区別がなくなったこと、最高裁でも合憲であるとした結論にあっても反対意見が多数出ていること等を根拠に、家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるとしています。そして、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由にしてその子に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるとの考えが確立されてきているとし、上記の結論を導きました。

憲法14条1項が定める「平等」は、合理的な根拠のない区別を許さないとするものですが、この合理的な根拠も時代とともに変化していくことは理解できます。しかし、非嫡出子であることに、その子は責任がないという点は昔から変わらないのであり、もっと早くこの結論にたどり着くべきであったと感じています。自民党の中には司法の暴走とか、家族制度の崩壊などと最高裁の判断を批判する議員もおりましたが、最高裁は人権救済の最後の砦としての役割を全うしたのであって「暴走」などと言われる筋合いはなく、相続分が同等だから家族制度が崩壊するというのは論理飛躍しています。今回の最高裁の判断を覆せるだけの根拠にはならないでしょう。国民の知る権利等を著しく侵害する秘密保全法の方がよっぽど立法府の暴走です。

「平等」とは平易な言葉ではありますが、何をもって平等とするかは時代によっても変化する難しい問題です。ですから、私たちは常に不当な差別はないか考え、議論を続けていかなければならないと思います。

2014年

今年はワールドカップ

弁護士 西田雅年

今年は待ちに待ったワールドカップ(WC)ブラジル大会の年です。WCはオリンピックと同じく4年に一度開催されますが、その人気はオリンピックを凌ぐと言われています。一説には全世界で10億人以上が観戦していると言われるほどです(水増しあり)。私は昔から細々とテレビでWCを見てきました。おそらく生で最初に見たのは82年のスペイン大会からと思います。当時は、ソ連とか西ドイツという国が出ていました。ちなみに優勝は、ロッシの活躍でイタリアでした。スペイン大会は世界24カ国でしたが、現在は32カ国に増えています。

先日、予選リーグのグループ組合せ抽選が行われ、日本は予選Cグループに入りました。この組には、コロンビア(世界ランク4位、2013年12月現在)、ギリシャ(同12位)、コートジボアール(同17位)が入っています。日本の世界ランクは48位ですから、すべて格上の国ばかりです。グルーリーグでは上位2チームだけが決勝トーナメントに進出できるので、4カ国中2番に入れるのかどうかが焦点です。前回南アフリカ大会では、戦前の予想を覆してベスト16に進出しましたが、果たして今回はどうか。私の予想では、1勝1敗1分、得失点差で辛うじて2位通過としています(果たして当たるか?)。その後の決勝トーナメントでは、グループDの1位通過チーム(ウルグアイかイタリア)なので、今回もベスト16で涙を飲みそうです。

さて、WCの初戦は、6月12日、地元ブラジル対クロアチアで火蓋が切られます。そして、日本の初戦は、対コートジボアールで、6月14日(土)22時キックオフです。日本とは12時間の時差があるので、日曜朝10時となり、テレビ観戦には持ってこいです。

2014年

労働環境の改善のためにも

弁護士 八田 直子

昨年を振り返ると取扱い事件として労働案件が多い年でした。解雇、労災、労働条件の内容を争うなど様々な案件がありましたが、多くの事件の中で、同時に未払残業代も請求するということが多かった印象です。

残業代は時効が2年と短いものの、サービス残業については従うしかないと言う方が多いため、長年サービス残業を行いつつも請求に踏み切ることができない、または、権利として請求をしようと決心した時には、その多くが時効で認められない、というのが現状です。しかし、サービス残業をそのまま放置したことで、過重労働が増していき、その結果、体調を崩してしまうという方々もおられます。

したがって、サービス残業を強いられている方には、サービス残業は仕方がないんだと受け入れてしまうのではなく、権利として請求を行ってほしいと思います。

その際、タイムカードがないけれど請求できるのか、始業時間と実際に来いと言われている時間が違う場合はどうなるのか、休憩時間も実際に拘束されているが残業代に影響するのか、一定の固定残業代が支払われている場合はどうなるかなど、分からないことがあれば一人で悩まず、是非、ご相談下さい。

2014年